絶望の日本で希望を探す(1)

社会問題
新緑の南禅寺三門(2023/05/20)

 全く出口の見えない状況でも、どこかに何かがあるはずだ、と思いながら時間ばかりが過ぎてゆきました。社会学者の宮台氏は、この状況を「日本の劣等性」と断じつつ、それに代わる公の場のありようからの再構築を可能かもしれないものとして述べていますが、私の間違った理解なのかもしれないことを承知していただいた上で、視点を変えて考えてみました。もう国という単位で物事を考えるのは意味がないのかもしれない、と。もっと小さなユニットでの優しい変革ならありうるのかもしれない、と。

 だから大上段に振りかぶって日本という国家、そしてそれを支配する政府には何も期待できない、と思ったとき、ふっと息が楽になり、自分は自分であり、仲間と一緒に何かを成し遂げようとする活動は、それなりの公の場を形成するものかもしれない、などと思ってしまいました。恐らく今後日本は長い停滞期に突入することでしょう。腐敗が蔓延し、カルト宗教政治がのさばるでしょう。でもその中でも人々は生きていかなければなりません。これはひたすら自民党に票を貢いだ日本人自身が招いた結末なのでしょう。長いものに巻かれ、勝ち馬に乗るのがよい、という処世術。自分という姿が全く見えない処世術によって、仕返しをされているのでしょう。

 とはいえ、傷口に塩を塗るように「出入国管理法案」の改悪、「LGBTQ+理解増進法案」という名の差別促進法案等々、極めつけは「防衛費財源確保法」を最後っ屁のようにして国会が閉じました。なんてことを、と絶望が加速するようでした。戦後体制がそのように構築されてきて、もう最終段階で人々の息の根を止めるべく抵抗の手段をじわじわと奪われて、国が滅びるのを見ていくしかない状態なのでしょう。その無力感をさらに裏打ちするのがアメリカの従属国家として生きる決心をしたとも思える現政権の姿なのかもしれない、と思います。

 アメリカ政府(以下アメリカと省略)が1945年日本に進駐して以来、サンフランシスコ講和条約とともに結んだ安保条約によって手を変え品を変え実に辛抱強く政治的にも経済的にも日本政府に干渉し、そのすべてにおいて国民そっちのけでアメリカに従属するよう手なづけてきた成果が、第2次安倍政権以降ようやく形になって出始めているようです。アメリカという国家のこれほどの完璧な勝利は、日本の敗北とセットで歴史に残るものでしょう。朝鮮でもベトナムでもアフガンでもイラクでも得られなかった勝利が日本で得られたのです。これから日本はアメリカの先兵となって動くのでしょうか? 国家の中枢部もアメリカ第一主義者に固められ、官僚もアメリカの事務屋さんとして重宝され、産業界は先端産業を破壊されてもなお、既得権益にしがみつく企業が尻尾をふっている、こんな形の国に未来はあるのでしょうか? 大手メディアが本質的な部分での政権監視をしなくなって政権の軍門に下っている現在、国民は何も知らされないままになるのでしょうか?

 万が一、仮に政権交代が起こったとしても、すでにがんじがらめになった各種のアメリカとの協約のもとで、それを反故にすることはできるのでしょうか? 大手メディアの現在の体たらくを見ていると彼らは邪魔になりこそすれ力になるとは思えません。ソ連崩壊の大きな要因の一つはグラスノスチ(情報公開)だったと言います。いままでロシア関係の本を分野を限らずいろいろ読んできましたが、ソ連時代を含めてロシア政府の文書類の山積は官僚主義の面目躍如たるものがあるような…。プーチンになって再び扉が閉ざされましたが、ため込んでいることでしょう。官僚がどこまで情報を公開しうるか、日本の場合は甚だ疑問です。敗戦で公文書を簡単に焼き捨てるお国柄ですから。さらに国民の間に茫漠として存在するアメリカ性善説のような雰囲気が、私は怖いのです。武器の爆買いに見られるように、徹底的に税金という日本の財産を搾り取られ、代理戦争(それも古典的な)に駆り出され、使い道がなくなったら簡単に捨てられかねない、そんな危うさを感じています。尽くしたのに棄てられる、というシナリオ。

 このサイトを始めたときは、人生の終わり近くなって、身辺雑記のような形で日常の思いを書く予定でしたが、あまりにも希望のない出来事が続くためにテーマがどんどん大きくなってしまいました。私の実体験からの意見もいろいろ含めてあるのですが、今後は具体的な体験を絡めて原点に立ち返り、身辺雑記的に論を進めていきたいと思います。なお私が大きな希望を感じるひととき、それは「ペシャワール会」の会報を読むときです。一生懸命生きている人々の心がそのまま伝わってきます。素朴な生き方の価値を再確認するとともに、心がつながる尊さを見直すときが来ているようです。人間としての温かさをそこに見出します。日本再興のヒントはここらあたりにあるのかもしれませんね。もっともっと会員が増えてほしい、と勝手に願っています。
 (ペシャワール会のホームページリンクです。http://www.peshawar-pms.com/)

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