ワクチン騒動と接種体験記

健康
ミュンヘン近郊フライジングの街で(2016年7月)

 昨年からコロナ(Covid-19)のパンデミック下に置かれた世界の状況は、終息の気配もなく、不安定なまま変異株も登場して感染拡大と縮小の波を繰り返しています。その中で今までの常識を覆す速さで開発されたワクチンを巡っての日本での騒動は、やはり想像どおりでした。何もかもが混乱と矛盾の極みと言っていいほどに無能な政府、緊急事態宣言とは無能無策な政府を指しての緊急事態だ、と思うことにしました。ですからいまでも私の脳内では緊急事態宣言がつづいています。

 そのような状況にあって、自らの意思で決定しなければならないのが、ワクチン接種でした。空気を読む日本人にとって自己決定は苦手、普段なら「まだわからない」でしばらくは周囲の状況を見ているのでしょうが、前門のコロナ後門のワクチンという状況では、多くの人が急いでワクチンを選んだのもむべなるかな、と思いました。

 私の場合は、余るからということで、たまたま声をかけてくださる方があり、接種するならこのチャンスに、と考えてすぐに応じることに決めました。その声掛けがなければ、数量が限られているわけではないので、騒動に巻き込まれたくない・状況を見て今年中に接種できれば、という感覚でした。

 1本が5人あるいは6人分というファイザー製ワクチンの場合、こういう余りが出ることは予想されていたはずで、たしかイスラエルではそのキャンセル分のワクチンを場所を決めて希望者に接種する態勢を取っていた、とかなり以前の報道で読みました。希望者が多ければあぶれるのですが、こういう時は臨機応変の態勢が重要。日本はこの臨機応変が下手です。統制を乱すなど断罪されるのを嫌ってすぐに硬直したやり方に戻るかさらに混乱が増大してしまいます。

 ここ数日、日本ではワクチン供給に問題が出てきて滞り始めたとか。このワクチンは当初2月ごろ日本にはブツが来てないと言われてきました。五輪との関係でコロナへの対応政策が無節操にころころ変わるのを危ういと思っていましたが、ワクチンも同様で、やっている感を出すためにメディアを動員して接種の記事が嫌になるほどたくさん出て、判で押したような接種写真の氾濫が嫌でしたが、ワクチンは余るほどいっぱいあるような報道でした。

 他方、二月にEUから日本向けに出されたというワクチン5000万人分についても不明な状態で、かかわる部署がやたらと増えて混乱を醸成していったような…。厚労省、ワクチン大臣、経済再生担当大臣、総務省、そこに官邸も絡み、船頭多くして船山に登る状態です。菅首相のパラノイアを象徴する「五輪」「ワクチン」が、妄想から強引に実体化されていくゆがみが、日本社会の破壊を引き起こさないか、私は本気で心配しています。

 ワクチンは本人の安心のためだけでなく周囲の安心にもつながります。いろいろアレルギーがあって不安を感じ、接種しない人を、私は何人か知っています。その気持ちもよくわかるから、5月中旬と6月上旬に私は接種しました。

 1回目は世間で言われている通り、翌日、接種部分の腫れから来る筋肉痛が見られたこと程度で、すぐに治まりました。2回目は、1回目と同様当日はまったく問題なく、夜から筋肉痛が出てきました。翌朝、37度台の発熱があり少しずつ上がっていきました。外出の用事があり、やむなく解熱鎮痛薬カロナールを服用して出かけました。

ワクチン後の副反応に備えて処方されているカロナール
ワクチン後の副反応に備えて処方されたカロナール

 ついでに寄る店もあり、4時間ほどでしたが、カロナールなしでは、店の検温探知機が作動したかもしれません。もしコロナにかかっていて発熱した場合でも解熱剤を服用していたならば、店の検温探知機は意味がなくなる、と言えることにも気がつきました。どんなに気をつけていても現在の日本のコロナ対策ではほころびがいっぱいあるのです。

 帰宅後、2時間ほど経過して再び発熱し始めました。倦怠感もなくただ発熱して最高38.4度まで上がりました。しんどくはないので、普通に過ごして就寝前にカロナールを念のため服用して、翌日は治まりました。発熱するというのは身体の免疫機構がワクチンに反応していること、と聞きました。若い女性が強い副反応を示すのもそこから、というわけで「もしかして私、若い?」と喜びつつ発熱を堪能しました。1日だけのシンデレラ状態でした。そのあとは夕方一時的に37度を超える程度の状態が3,4日続きましたが、あとは完全に治まりました。

 人間の身体はそれぞれ一人ずつ異なりますから、私の体験は普遍化できないことを承知の上で、敢えて記述しました。受けたワクチンの有効期間は8月いっぱいでした。私はいままでワクチンで体調を崩したことはなく、接種部分が痒くなる程度で、アレルギーもほとんどないので、ためらいなく接種を決定できました。万一、命にかかわることになっても余生も大して長くないし、と割り切りました。不安を感じて接種しない人々がいることも知っています。誰もが未経験であるワクチンについては、それぞれが決定する権利を持っています。

 重篤な副反応に関しては、厚労省が「関連性なし」あるいは「関連性不明」「調査中」ということで、調査しないままになっている事例が多いと聞きました。こういうことは情報をきっちり出したほうが、安心なのですが、官僚は国民を信用していないという基本姿勢が隠蔽を選択させるのかもしれない、と思ったことでした。

 他方、現在問題になっているワクチン陰謀論に縋りつく人は、ワクチンを否認する根拠を求め、それに激しく同意することで、自分で決定する不安から逃れて、自分を正当化し、外部に責任を丸投げして心の安定を得ているのかもしれません。自分の気持ちの二律背反に苦しんでいる人たちなのかも…。

 聞くところによると、中国では一般人から接種を始めたとか。昔から不老長寿に大いなる関心を持ってきた中国の人たちは健康についてはそれぞれが一家言あります。ワクチンへは忌避感が結構強いため、地域によっての進捗率には大きな差があると聞きました。感染者が出ると、とたんに接種を求める人が増えるらしいのですが、私から見ると予想よりも接種しない人が多いな、というのが実感です。

 北京市が9割を超えているのは2003年のSARSで大変だった、という記憶が人々に残っているからでしょう。中国は人口の多い国なので、調べるたびに数値そのものがまず驚きです。14億人という人口は日本の約11.5倍になります。中国のワクチンは不活化ワクチンですから、インフルエンザワクチンと仕組み的には同じ、と言えるのでしょう。その分効果は低いと報道されています。インフルエンザのワクチンと同様に毎年打つ必要があるのかもしれません。台湾でmRNAワクチンやアデノウィルスベクターワクチンを心配する人は大陸に接種を受けに行っているとの情報もあります。

 さまざまなワクチンが同時に存在して、数年後に結果を競うことになれば、それはそれで素晴らしいことなのではないかと思います。100年に一度の全世界を覆いつくす巨大なパンデミックに居合わせて、ワクチンに関する社会事象や自らの体験を語ってみました。

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