絶望の日本-希望はどこに(3)

社会問題
寒波の中、夜12時過ぎの寝室の室温。どうせ休むまでに達しない設定温度。

 連日、メディアが伝える政治・経済・社会状況、どこにも希望が感じられない日本の現状に、なぜこんなことになってしまったのか、私たちの来し方の根本的なありように問いが突き付けられているように思います。と言っても自己責任に還元するものではありません。どこかでなにかを間違えたまま動いてきた社会の決着点が現在なのだとすれば、その間違いを明白にしなければ、如何に取り繕っても早晩破綻するのは免れないでしょう。

 断片的ですが、まずいくつか思い出すことを並べていきます。日本の高度成長期が最近しきりに回顧されますが、私にとってそれは幻影のようなものとして、そして幻滅を伴うものでした。テレビでしきりにそっくり返ったサラリーマン(ビジネスマンとも言いたくないので)が偉ぶって「アメリカなんか相手じゃない」と言った発言をするのを苦々しい気持ちで見ていました。特に印象に残っているのは、デトロイトに出張したある企業の社員が、全くお話にならない、と傲慢にも言い放つテレビ映像でした。

 さらに教育出版関係某有名企業の社員と接する機会があったとき、彼らの余りの無能さにひっくり返らんばかりに驚いた記憶があります。メディアが持ち上げる日本経済の凄さに洗脳されかかっていた私、きっと彼ら社員は凄いのだろうとそれを楽しみにしていたのですが、社名に寄りかかってそれだけが誇りとなっているような無能さ(アイデアの陳腐さ)にいたたまれない思いがしました。全員がそうであるというつもりはまったくありませんが、いまこれと同じ光景をどこかで見たような、とおもってふと思い当たったこと、それは現在「日本凄い」とそれにしがみつき、「日本人であること」が唯一の誇りとなっている人々の少なからぬ存在です。そして私に幻滅を与えてくれた社員の会社は消えました。やはりという思いと同時に、彼らがどうなったのか、気がかりではあります。

 だが、私を洗脳しようとしたメディアは、相変わらず確固として存在しています。そしてことあるごとに「日本凄い」のキャンペーンを続けています。そのひとつが排外主義的言説に結実しようとしているのではないか、と。とくに、いま日本の多くの人々がリベラル・保守を問わず、中国への嫌悪を隠そうとしなくなりだしたのに、大きな危惧を抱いています。それは、メディアを通じてこの失われた30年の間、ずっとしつこく流されてきた「日本凄い」の成果でしょう。上下関係で成り立っている日本社会では、その「凄さ」を称揚する裏に「凄くない」存在が必要になります。

 「日本人であること」を誇りの糧にしようとする人達は、悲しいかな、それ以外の誇りを持つ機会を奪われてきたのかもしれません。実際にはそれぞれが何らかの誇りの種を持っているはずなのに、それを育てようとしない仕組みが社会の中に埋まっているのでしょうか。社会の仕組みの後進性が、掘り出されることなく、相変わらずその根幹で力を持っているこの社会に違和感を最も感じているのは、女性であり、子供であり、障碍者であり、いわゆる社会的弱者と言われる人々なのでしょう。この社会の後進性とは、金儲けできるかどうかを基準にして役立つかどうかを判断する優性思想にうらづけられ、日本では家父長制という名のもとに、役立たないものへの強烈なミソジニーを振りまいているものです。

 少子化はその一つの帰結なのだ、と思います。未来を生きる子供を持つことを躊躇わずにいられないような、不安定な社会の未来像、あまつさえ戦争の可能性を嬉々として論じる連中が国の中枢部にいるという異常事態こそが、少子化の元凶なのです。こんな簡単なことに気がつかないお花畑な政治家がのさばっている現状は絶望的です。少子化は女性側からのストライキだ、と思っています。誰が自分の子供や孫を経済的にもどうなるかわからない貧窮の国で育てたいと思うでしょうか、さらに戦争に送り出そうとするでしょうか、子供や孫の生活の場がを否応なく巻き込まれていく戦争を受け入れられるでしょうか。真剣に考えるならば結論ははっきりしています。アジア・太平洋戦争で一般の日本人は国家のプロパガンダのいかがわしさを学習したはずです。

 それを再び繰り返そうとする国家の中枢部は狂っています。結局のところ、アメリカの軍産複合体の意向に判断のすべてをゆだねて、なんの生産性も持たない武器を爆買いし、役に立たない武器ばかりがあふれてる日本列島って漫画です。さらに武器や兵器の研究にお金を与えて、それを産業に育てて輸出しようとするなんて、アメリカの軍産複合体的あり方を日本もなぞって悦に入ってるとしか思えません。馬鹿馬鹿しいの一語に尽きます。アメリカで軍産複合体が力を持った結果、アメリカが世界中で戦争をしかけつづける結果になっているこの現状。そのすべてに目を背けている日本政府は、思考停止して積極的にアメリカの属国になる選択をしたようです。いまの中枢政治家は利権という名の権力と金に群がって、国民のことなんかこれっぽっちも考えていません。日本はこのまま後進独裁国家になっていくのでしょうか。

 鍵は国民にあり、と思うのですが、それが実に頼りないうえ、野党たるべき立憲民主党の上層部が、権力にすり寄る形で見事に裏切ってくれたのは正直がっかりでした。権力というのはそれほど蜜の味がするものなのでしょうか。時事通信の世論調査で立憲の支持率が半減したのは、ある意味当然の結果でした。立憲は、権力すり寄り派と権力批判派の二つに分かれて、権力批判派はれいわと共産党との野党連合で政権交代をはっきり目指してほしいです。いまそれが実現しなければ、恐らく徹底的に国民生活が破壊された焼け野原に、一から新しい国家を建設することになりかねないでしょう。

 最後に一言。台湾有事はアメリカの軍事産業がでっち上げたプロパガンダですが、見事に安倍がそれに乗っかって宣伝役を務めました。しかし台湾では世論調査で8割以上の人々が現状維持を望んでいることを忘れてはならない、と思います。私が危惧するのは、仮にアメリカが本気になった場合、5%に過ぎない独立派にお金を注ぎ込んで独立運動をでっちあげる可能性です。アメリカ本土はヨーロッパからもアジアからも離れているため、実感に乏しいままお人好しなアメリカ世論を巻き込んで、その方向にのめりこんでいく心配があります。ただしアメリカのメディアはまだ日本よりその機能を果たしているようですから、その報道に期待したいとは思いますが…。で、なにかのきっかけで軍事的衝突が起こったとき、そこに予想されるのは焼け野原となった日本と台湾です。アメリカはそんな事しーらね、とばかりに中国とうまくやっていくでしょう。こういうシナリオはまっぴらごめんです。

ウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計の東華菜館。外観はもちろん、日本最古のエレベーターとともに室内のゆったり落ち着いた神経の行き届いた設計が素晴らしい

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