2008年あたりから不眠に悩まされてきました。当時、大連在住で、私の周囲は不眠とは無縁な人ばかりで、全く理解されず往生しました。薬局へ相談に行きますと店員が「睡眠薬を飲んだら死ぬよ」と脅かします。夜の来るのが鬱陶しく、いっそのこと眠くなるまで好きにさせてくれたら良いのですが、周囲の人たちは「眠らないと身体に悪いから」と早い時間から強引に横になるよう勧めます。いまにして思えば間違った対応方法なのですが…。気分の問題だから、とビタミンCの錠剤を睡眠薬だ、と偽って渡されたこともありますが、もちろんどうにもなりませんでした。
ついに日本人健康相談室(日本人の医師が駐在していて相談に乗ってくれる)に出かけて、抗不安薬であるアルプラゾラムをその場で14錠処方してもらいました。それ以外の薬は当時の中国では規定でダメとのこと。100元以上(当時1元は12円前後)の出費です。一般の病院ではそんなに高くないことを知っていたので、大連医科大学付属第2病院に出かけて「方便門診」(方便=便利とか便宜を図る、門診=外来)で薬だけもらうことに挑戦しました。アルプラゾラムを漢字で書いて担当医師に示しましたらOKですぐ処方がもらえました。といっても最大3週間分21錠です。
やったーという思いで会計を済ませて薬剤部に受け取りに行きます。たしか3元程度だったと思います。日本人健康相談室の実に50分の1の価格! 瓶から移したのでしょう、封筒状の薬の袋に錠剤がそのままで入っています。目印も何もない錠剤ですが、それで2年近く凌いでいました。しかしある時たぶん間違った薬が処方されたのでしょうか、身体の平衡感覚が明らかにおかしいのに気づき、慄然としました。
日本への一時帰国の際に、ずっと以前からブラチゾラムを服用していた妹から何錠かをせしめて対応。それでは足りないので中国の知り合いで薬の関係者に頼んでやっと手に入れたのがディアゼパムでした。これは長期に亘って作用するので本来避けたいところですが、そんなことも言ってられない程、困りました。他方中国での関係(グヮンシ)の有用性を実感しました。
大連にいた時期は、中国がイケイケどんどんで経済成長を始めた時期でもあり、若い人が多かったので、不眠も大きな問題にはなっていませんでしたが、経済規模が大きくなってくると仕事のストレスも増えて現在では社会問題として不眠がとらえられている、とも聞きました。2011年、銀行関係の管理職の知り合いは、人間関係のストレスの大きさを嘆いていましたっけ。
私は2011年秋に帰国して、健康保険が復活し、安心して処方してもらえるようになりました。医師である友人の助言でブラチゾラムとフルニトラゼパムを服用し始めました。他方、量を減らすことも考え始め、睡眠薬は半錠ずつにしてそこに抗不安薬アルプラゾラムを半錠加えていました。私の場合、量を減らしたいという思いは常にあったので、逆説的ですが、安定的に薬があることがその助けになった、と思います。
どうすれば薬を減らすことができるか、試行錯誤しているときに、気がついたのは季節による睡眠の違いでした。秋から冬にかけて次第に眠りが深くなり、春になると不安定になるのです。薬を減らすチャンスは秋から冬にかけての期間だ、と気がついてからは毎年この時期に少しずつ減薬を試し始めました。恐らく太陽光と関係があるのでしょう。日が短くなると眠りは正比例して良くなり、日が長くなると眠れなくなります。人間は冬眠しませんが多少は関係がある、と思っています。
冬至を超えると寒さはまだまだつづくにしても、陽光は1月終わりごろにははっきりとても明るいのに気がつきます。というわけで何年もかけて挫折もありながら、現在はフルニトラゼパム4分の1錠だけでほぼ大丈夫になりました。どうも睡眠不足だなと感じるときのみ、ブラチゾラム4分の1錠を追加します。1週間に1,2回程度です。つぎの秋冬には薬抜きで眠れるかも、と期待しています。
また、眠っていないと思っても人間は意外に眠っていることがわかるようにもなりました。私の場合は現在中途覚醒が問題なのですが、熟知している音楽をYouTubeで小さめの音にして鳴らすとその記憶でどの部分から眠ったかが確認できますし意外に眠っていることが確認できます。このようにして、2、3度ほど中途覚醒しながらも安心が得られました。ただしYouTubeは広告が入らないものに限ります。なぜかコマーシャルになると目が覚めることもわかりました。コマーシャルは基本けたたましいのです。
なおベルソムラという薬があり、それも服用していますが、あまり効かない気がしています。これは依存性がないということで処方制限のないものなのですが、これだけでは全く眠れません。歩行時の杖のように睡眠をサポートする作用で減薬の支えになっているかもしれません。
睡眠時間はひとによって差があるらしいのですが、私の場合は基本6時間余で、日中眠気に襲われることもなく過ごせています。例外は、室内楽で3,4時間集中して、頭も体もフルに使ったときです。必ず帰宅途中の交通機関で眠ってしまいます。身体が疲れているというよりも頭が快適に疲れた状態のほうが、この眠りに関係しているように思われます。何度乗り過ごしをしたことか…。
とこんなことを語っている傍らで戦争に苦しむ人々がいる、というギャップにめまいがするような思いです。もちろん停戦を要求するべき相手はロシアのプーチンです。他方ウクライナに武器供与を積極的にするアメリカにも疑問。アメリカがするべきは大国としての停戦のための努力なのに、ウクライナに代理戦争を求めているかのようにも感じています。
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